第16回放送 2015.08.27 テーマ:学童歯科保健その1、顎関節症
8月の「あなたのお口を守り隊」は昨年倉敷市保健所が取りまとめました「倉敷市歯科保健マニュアル」についてのご紹介と顎関節症についてお話致します。
●顎関節症はこんな病気です。
口を開けようとすると顎関節(耳の穴の前にあります)や顎を動かす筋肉が痛む、あるいは十分には大きく口を開けられない。または口の開け閉めで顎関節に音がする。という症状がでます。医療機関に来院される患者さんでは女性が多く、年齢は10歳代後半から増加しますが、20~30歳代で最大になり、その後は年齢が増えるとともに来院する患者さんは減少します。
●診断について
顎関節や筋肉の痛みや口の開けにくさ、関節雑音のうちの一つがあり、他の病気を否定したときに顎関節症と診断します。一般的には、症状がどのように始まり、どのように変化したかをお聞きし、顎関節や筋肉、口の中を診査し、必要に応じてエックス線撮影やCTによって骨の異常の有無を調べ、骨以外の関節構造や筋肉の問題についてはMRIによって調べる場合もあります。顎関節症で出現する痛みや口の開けにくさは、親知らずの炎症や他の病気でも出ることがある症状なので、顎関節症であることを診断するためには、他の病気によって出てきている症状ではないことを確認する必要があるのです。
●病気の状態について
顎関節症の病気の状態(病態)は現在4つに分類されています。最も多いのは関節内にある関節円板というクッションが前方にずれることで起きる「カクンカクン」という音が出る状態です。
あるいはずれがもっと大きくなることで大きな口が開けられなくなる状態です。特に口が大きく開かなくなると、口を開けたり食品を咬もうとするときに痛みが出ます。この2つの状態で来院される方が全体の60%ほどになります。
これ以外では顎関節そのものには痛みがないのですが、下顎を動かす筋肉がうまく働かなくなり、口を開けようとすると頬やこめかみの筋肉が痛むという状態あるいは関節円板のずれはないのですが、口を開けようとすると顎関節が痛む捻挫に似た状態があります。4番目はこれまでの3タイプほどは多くありませんが、関節を作っている骨が変形するタイプの顎関節症があります。このタイプは長年顎関節症が続いていたり、年齢の高い方に多くみられます
●顎関節症を悪くする上下歯列接触癖(TCH)について
上下歯列接触癖(TCH)とは?
本来上下歯列間には安静空隙が存在し、非機能時には上下歯列が接触していない。接触は咀嚼、会話、嚥下、の際に瞬間的に起こるだけです。したがって、その接触時間は加算しても1日平均17.5分とされています。しかし、機能時以外の時間にも接触を持続させる習癖を持っている人がいます。この習癖を上下歯列接触癖(TCH)と名付けられました。
なぜ上下歯列接触癖(TCH)がいけないのか?
たとえ強いかみしめを行わなくとも、歯が接触しただけで咬筋や側頭筋の活動が高まります。したがって接触が長時間に及べば咀嚼筋は疲労します。
また顎関節を絶えず圧迫することになるため、関節への血液供給が阻害されることで、疼痛の過敏化、潤滑低下から関節運動の摩擦抵抗の増大することが推測されます。
セルフチェックしてみよう!
・口唇を閉じて咬む。この状態から上下歯列を離す
⇓
違和感があればTCHの可能性有り
・口唇も上下歯列も離れた状態にしておくこの状態から上下歯列を接触させる
⇓
口唇も一緒に閉鎖するならTCHの可能性有り
上下歯列接触癖は顎関節症の是正に有効!?
・家や職場に「歯を離す」「力を抜く」などと書いたメモや気づきとなるシールを多数貼りそれを見たら上下歯列の接触状態を自らチェックし顔面から上半身にかけて脱力をするというもの。
⇓
最終的には歯が接触すると条件反射で無意識に歯を離すようになります。
次回も乞うご期待!
|